Dear. アカリ




きみがあの頃から手紙を書いてたなんて、全然気づかなかったな。

サクラが生まれてから僕は、幸せってこういうものなのかなって本当に思ったよ。

きみと二人で感じていた幸せの上に、大きな砂糖菓子がついてきたみたいだった。



サクラはもう5歳。大きくなったよ。

まだまだ、甘えたなところも残っているけれど、しっかりしたおませさんで、いい子に育ってる。


僕がぎゅって抱きしめてあげて、ぐるぐるって一緒に回る遊びがサクラのお気に入りみたいで、

僕は毎日目が回りそうになるよ。

でも、やっぱり子供って可愛いね。もう一回って言われても断りきれないや。



サクラは甘いものが大好きでね、よくクッキーを焼いてあげてるんだ。

キラキラ星の形をしたクッキーの形がお気に入りみたい。


普段は、自分の分ばかりたくさん取っちゃうようなところもあるんだけど、

ちゃんとママの分も取り分けてあげてるところを見ると、ちょっと感動しちゃうな。





サクラの髪の毛は小さい頃よりも、もっとアカリの髪の毛に似たと思うな。

顔は、町のみんなも僕によく似てるっていうけど、僕はきみの面影をサクラに重ねてしまうんだ。

瞳は僕と同じ色だけど、めじりはきみに似ているし。

ちょっとしたときに、にこりと笑う姿は小さなきみを見てるみたいだ。



時々、何もなくなってしまった牧場を見て、サクラが少し悲しんだ表情をするんだ。

そんなとき、僕はサクラにアカリの姿を重ねてしまうよ。



きみが営んできたかつての牧場の姿を、僕は一生忘れない。


今は刈り込んでしまって雑草しか残らない牧草地が青々と生い茂っていたことを。

一匹もいなくなってしまったひっそりとした動物小屋に、動物達が楽しげに生活していたことを。




きみが色とりどりの作物を育てていた畑に、僕は今サクラと一緒にミニトマトとキュウリを植えているんだ。

もみじみたいな小さな手でジョウロを持って、毎日ちゃんと水をあげてるだけど、ちょっと危なっかしいな。

サクラ、観察日記もつけてるみたいで、はりきってるよ。

無事に実ったら、おいしい料理を作ってあげなくっちゃね。





サクラの姿が見えてる?僕の姿も。

いつも見守ってくれてるのかい?




僕からも、きみの姿が見えたらいいのに。





From, チハヤ


X13 夏の月19日







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